1 学童クラブって何?保育園と違うの?
学童クラブとはざっくり言うと、
- 保護者が日中働いていて学校終わりの放課後に、子どもを家で一人で留守番させとくのはまだ心配
- 病気や介護などで子どもの世話ができない
- 虐待などで放課後ずっと家にいさせとくのは危険と判断された家の子
こういった事情のある小学生の主に低学年を、保育園の延長で見るようなところです。
公的な学童クラブの管轄は厚生労働省。
学童クラブ事業とは、児童福祉法第6条の3第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない都内小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業です。
東京都保健福祉局ホームページより引用
小学生になると学校に行っている午前中~午後の3時頃まではいいのですが、
保護者が仕事をしている場合は帰宅までの数時間が困りますね。
学童クラブはその時間の子どもの預かり所となります。
小学校には夏休みなどもあるので、そういった学校のない日は朝から預かってくれるクラブがほとんどです。
このサイト全体で、「学童クラブ」というのは、厚生労働省管轄の公的な「放課後児童健全育成事業」
放課後児童クラブとも呼ばれいて、運営形態は
①役所が設置して自治体が運営
②役所の施設を民間事業者が運営
③民間施設に役所が補助金を出してる
※③については幅広く一概に扱えない
一方で月額5万も6万もする塾や習い事の子ども預かりで、税金が一切使われていない施設は民間学童クラブと呼ぶことにします。
詳しくはこちらの記事の1章で分類を解説
子どもを親が働いてる間に預かる、という点では保育園も学童クラブも違いはありません。
大きな違いは子どもが自立へ向かう小学生という事から来る、学童クラブの機能的な部分にあります。
2.保育園と学童クラブの機能の違い
2-1.学童クラブは育成支援 保育園は保育
学童クラブの機能は「保育」ではなく「育成支援」です。
育成とは、生活や遊びを通した全般的な成長の支援です。
預ける保護者からしたら学童クラブの開所時間や環境・サービスの違いも大きいのですね。
でも学童クラブは、子どもの年齢や発達による育成内容の違いの方がより重要となってきます。
例えば保育園だとケンカになっても
「ごめんね」→「いいよ」
学童クラブだと
「ごめん」→「また同じことやったから許さない!」
→(言われた方に対して職員から)「そう言われても仕方ないね。謝れば許してもらえる訳じゃないよ」
子どもの理解に合わせて内容も当然変わってきます。
保育園ルールが通用しなくなるというわけです。
「預ける」という点では
●急な仕事で時間を延ばすなどののハード面
●子ども同士の成長や過ごし方などのソフト面
両方大切でしたね。
学童クラブでは
●ソフト面が「保護的」➔「自立支援」
●ハード面も「期待に応える」➔「親に頑張ってもらう」
こんな感じでシフトチェンジします。
学童クラブの決定的に保育園と違う点は、途中で子どもが自立して、通う必要がなくなってやめていくことです。
保育園でも途中でやめることもあります。
だけどそれは保護者が仕事を変えたなどの「保護者側の事情」によるもの。
それと比べて学童クラブでは「子どもの成長に合わせた子どもの側の事情による退会」がとても多くなります。
- 塾へ行くのが増えた
- 留守番できるようになった
- 友達と自由に遊びたい
そのため学童クラブにいる間(いられる間)に、
自立していくために様々な面での準備が必要となってきます。
だから、"在籍している間に自立に向けて子ども・保護者に必要なことを伝えること"が学童クラブの大切な機能となります。
これから学童クラブを使い始めようとする親御さんには早いかもしれませんが、いずれ来る自立のためにこちらも参考になると思います。
2-2.学童クラブは保育園ほど手厚くはない?
よく、学童クラブは保育園ほど手厚くないと言われますが、それには積極的な理由と消極的な理由があります。
学童が保育園より手厚くない消極的な理由
・職員の熟練度などが一定ではないこと
・調理室がない
・育成室が狭いなどの環境的
これらはどうにもならない理由です。
給食ひとつとっても学童クラブでは出ません
(施設の制約から出せません・・公立の場合はだいたいこの理由も入ってます)。
学童が保育園より手厚くない積極的な理由
自立に向かう過程にある子どもとその保護者に、在籍している間に家庭でも頑張らないといけない所を
クラブが全部肩代わりして全てやってあげていたのなら、子どもも保護者も自立する力が育たないためです。
退会したあとに困るのは子どもと、多分それ以上に困るのは保護者です。
4章で書いている「自立支援」という役割が学童クラブのとても大きな役割となるので、
なんでもやってもらえると考えるのは、そもそもの間違いです。
それでも学童クラブでの支援は一年生~六年生まで同じわけではありません。
入ったばかりの一年生はいろいろと教えてもらえたり、保護者にもいろいろと情報提供があったりと、上の学年よりは格段に支援は手厚くなります。
学年が上がるほど、「やってもらえる」という感覚での手厚さはなくなるのは当然とも言えます。
ケンカの時に相手を怪我させた。
それが小学生になれば、やられた側は、
じゃなくて、
子どもが小学生にもなれば、自分で判断して動けるのが世間の常識なので、学童クラブに預けていると言っても保護者の責任も当たり前のように増えてきます。
こんな風に学童が全部やるスタイルじゃない理由は、子どもの考える力や判断力がついてくるから
- 大人が手取り足取りやってあげる必要が少なくなること
- 自立に向けて、家庭や本人にやれることはやってもらうこと
- 上の学年よりも、特に一年生には生活面や未熟な対人スキルについて手をかけて教えていく
ただし地域や施設によって大きく差があるため、
- 見守り程度の所
- 子どもの喧嘩のどのタイミングで介入するのか
- 支援員がよく見ていて子どもの力関係まで把握している所
- 大人がほぼ適当に遊んでいるだけで必要な介入すらしない
などの差が大きいところです。
そこが職員/施設の質になります。
3.保育園と学童クラブ-時間や迎え・環境面のハード面の違い
3-1.利用の仕方・時間や休みの違い
送り迎え
保育園では送り迎え必須。
だけど学童クラブは1人で帰ることもできます。
学校が終わったら1人で学童クラブに来ることになるため当然でしょう。
学校の敷地内にある学童クラブも多いのですが、帰りは一人で帰っていいのは同じです。
急な延長はできない
事故や電車遅延などでやむを得ない場合を除き、延長利用の可能性のある人は事前に登録が必要になります(多くは月毎の支払いがあります)。
登録していない場合、残業などで急に当日になっての"お願いします"は許されても
ルールの分からない一年生の初回だけでしょう。
最近では保育園でも実費で延長料金加算ができますが、それでも職員配置問題もあるため、当日迎えの一時間前などの申請は嫌がられます。
ただ、これも施設により差が大きいところ。
税金が使われてる施設だとこんな感じですが、塾みたいな民間学童では喜んでお金で対応してくれたりします。
育成時間は短め、土曜開所も半分
公設学童クラブの育成時間については、8:00ころ~19:00頃までが最長です。
民設や民間学童クラブは全くの別物なので、もう少し延びることもあります。
保育園に比べて時間が短いため、預けたいニーズに対してサービスがないことも「小一の壁」の要素です。
土曜開所は約半数の施設、日曜日は統計上は10%程度の施設で行われています。
この記事では"保育園との違い"について焦点を絞って書いています。
その他の学童クラブについてよくある質問や基本的なことはこちらの記事でどうぞ👇️
3-2.施設・環境・職員の違い/質
学童クラブは施設的に狭いかも
学童クラブの面積基準は1人当たり一畳くらい(1.65㎡)です
(※保育園の基準は室内2歳以上で1.98㎡)
幼児よりも体の大きい子どもがひしめき合っているように、かなり狭いと感じるかもしれません。
その基準でさえ25%のクラブでは達成されていません。
学童クラブは完全に縦割り
小1~小6はとてつもなく差がありますが、同じ空間で過ごします。
プログラムや活動によっては学年別でやることもありますが、多くはありません。
割りを食うのはほぼ高学年。
どうしてもハード面やプログラムなど低学年に合わせて作られているので、我慢が多くなる。
施設職員は高学年のためにも頑張りますが、限度があります。
育成内容~学童クラブは一人帰りアリ
育成内容については学校から自分で放課後に来所し、宿題をしておやつを食べ、遊びやプログラム活動などをして帰りまで過ごすのが一般的です。
帰りは一人で帰るかお迎えになります。
こちらの記事で、一日の過ごし方を詳しく書いていますのでどうぞ👇️
小学生だから宿題や学習がある
小学校では宿題がでるため、学童クラブでやることが多くなります。
積極的に教えてくれるかどうか、時間を決めているかどうか公設では施設の考え方次第。
基本的にはクラブは"このテーブルは勉強用"などの環境設定をして、子どもが自由時間に自主的にやる形が多くなります。
丁寧に個別に見てくれる学童クラブは、公的な施設では少ないです。
夏休みは弁当
保育園では栄養士が献立を作り、いろいろな面で工夫された給食が出ていたことでしょう。
学童クラブ、特に公設ではほぼお弁当です。
狭いと書きましたが、調理室はおろかキッチンすらない学童クラブもあるためです。
1人帰りだと、やりとりは連絡帳のみ
帰りは1人で帰れますが、その場合は学童クラブの様子を知れるのは本人の話や連絡帳のみとなります。
小学校でも定期的な面談でしか担任と会えないのが普通ですね。
それよりは多いけど学童職員目線では、一年間顔を会わせない保護者もいます。
連絡帳も人手が少ないため、放課後に来て数時間て帰るまでに詳細に様子を書いてくれるクラブはほとんどないでしょう。
聞けば教えてくれると思うので、保護者からのアクションが要るところです。
学童職員は資格あるの?人数は?
支援員の質は様々。
統計上は6割方は「放課後児童支援員」という学童クラブ専門資格を持っています。
子ども40人に対して、その資格を持った人を含めて2人は配置されています。
ただし経験値や質は様々です。むしろ過度に期待しない方がよいといってよいかもしれません。
学童クラブ業界は低待遇のため離職率も高く、経験豊かな職員が働きにくい構造だからです。
時間や夏休み、送り迎えなど利用のしかたや職員についての詳しい記事はこちら↓
4.学童と保育園の子どもの年齢/発達による違い
ここまで書いてきたように、学童クラブと保育園ではハード面の違いも小さくはないけれど、やはり大きいのは子どもが成長していることでのソフト面の違いです。
4-1.学童では保育園ルールが通用しない
保育園で通っていた保育園ルールが学童クラブでは通りません。
簡単なところだと保育園では
- "ごめんね" ➔ "いいよ"
- "いれて" ➔ "いいよ"
- "貸して" ➔ "後でね"、"いいよ"
学童クラブでは
- "ごめんね"→"許さない!"
- "入れて"→"君はルール守らないから入れない"
- "貸して"→気を遣って融通したり、交渉
学童クラブに通っている小学生の年齢は、発達的には中学年くらいに向けて、だんだんと気の合う仲間との時間が大事になってきます。
そこにいつもルールを無視する子がポッと出のように"入れて"と来ても入れてくれません。
その時の気分にもよりますが、その辺りの子ども関係はシビアです。
そんなやり取りを通して子どもは少しずつ学んでいきます。
4-2.学童では子どもの自主/自制に任せることが多くなる
子どもは友達関係や遊びの中で、様々なことを学びます。
支援員は必要なら介入しますが、通常の"人に怪我をさせてはいけない"、"物を壊してはいけない"などは
ある程度は分かっていることが前提に来ます。
世間的にも、小学生になったら様々なことを期待されます。
保育園で他の子に怪我をさせたら保育園の責任となります。
しかし学童クラブでは少し違ってきます。
登下校の途中で物を壊せばその子、保護者の責任。
クラブで他の子を怪我をさせても、学童の落ち度がなければ被害者側の保護者は、やった子とその親の責任と見ます。
(厳密な法的にはケースバイケース)
子どもの成長と共に、その子自身/家庭の責任が大きくなるため、その意味でも家庭での教育が大切になってきます。
学童クラブは育成支援、文字通り「支援」、早い話が"手助け"で「肩代わりじゃない」ってことです。
ベースはその子と家庭にあります。家庭にある責任まで全てを担うわけではありません。
4-3.学童クラブ退会後は自立、次の施設はなく3年生で卒会多数
保育園と決定的に違うところは、子どもが途中で自立していくことです。
その手助けをするのが学童クラブの役目です。
自立とは留守番ができたり、自分で約束をして友達と遊んだり、時間を決めて宿題を済ませたりなどの、親や学童クラブに頼らないで放課後~保護者の帰宅まで過ごせること。
極端な話、中学生になって学童クラブはありません。
それどころか、多くの学童クラブは三年生までです。(統計上も利用者の8割は3年生以下)
小1に留守番できなくても、三年生になってくるとできるようになって、次第に自分で選んだ友達と過ごせるようになるから。
そんな成長の通過点を過ごすところが学童クラブです。
高学年でも預かってくれる学童クラブもあります。
下の子の面倒を見たり、リーダー的な役割を持たせて運営しているところが多いですが、
変な期待をされて自分がのびのびできなかったり、高学年ならではの友達との関わりが足りないなど問題が多いです。
高学年の学童クラブ利用も全体の2割くらいありますが、その内訳は4年生11%、5年生6%、6年生3%程度とどんどん少なくなっています。
4-4.学童と保育園の違い~家庭との連携の仕方
学童クラブでは、育成を家庭と連携して行っていきます。
連携というのは「相互に」です。
預けっぱなしの親御さんもなかにはいます。
三年生になって自立できてきて、本人も問題ないならそれでもいいかも。
しかし何でも学童任せで要求も多い家庭は、学童クラブからしたら要注意の家庭です。
保育園の頃ならそのあとに学童クラブが控えているので、すぐに困ることはありませんが、学童クラブの後はもうありません。
そのあとは急に学童クラブにやってもらっていたことを家庭で全て何とかすることになります。
だから学童職員目線では、せめて在籍している間に卒会したあとにその子が困らないような働きかけが要る。
それが保護者によっては、敢えて突っぱねてくるように見えるかも。
よくある例は宿題。
学童でやらせてくださいと言う要求を、無条件で答えて職員が頑張ってやらせたとしてみましょう↓
卒会後はどうなるでしょうか?
卒会後に子どもが家に帰ってきても親は働きに出ていていない。
↓
子どもは口うるさく言われる学童職員がいなくなったとたんに、宿題などは自分でやらなくなり遊びにいってしまう。
↓
結局夜中に「何でやってないの」と親が怒りながらやらせる、
寝るのも遅くなる。
今まで学童クラブに丸投げだった親御さんが困り、子どもも急に叱られる事が増えるのが想像できます。
実際に学童クラブ卒会後に留守番をさせてみたらゲーム三昧、宿題もやらない、外にも遊びに行かない、
我が子なんにも
分かってないじゃん。
⬆こんな保護者を何人も見てきました。
なんの準備や教えもせずにいきなり1人にしたら、どんなにしっかりしている子でも、多少なりともうまく行かないこともあるでしょう。
もともと心配な子はそうなるのは当たり前で、その辺りの自立の視点を持って支援してくれる学童クラブは、敢えて家庭にやってもらうことを増やします。
また防犯について、交通安全について、子ども同士での大人がいなくても折り合いをつけてやっていけるスキルなど、
自立に向けて子どもが学んだり大人が教えることはたくさんあります。
しかもこれは学校ではあまり教えてはくれません。
学童クラブにいる時間は放課後のせいぜい三時間程度、家庭での働きかけがないことには身に付かないもの。
その子の今後の成長や家庭のためには、全てやってあげるという姿勢はよくない事。
家庭と共に先の事を考えて、学童クラブとしてできることで家庭を手助けしていく姿勢を、
家庭から見たら「何もやってくれない」と捉えられることもあります。
しかしそれは、「やってもらっている、考えてくれている」の裏返しかもしれません。
(人手不足などの消極的な理由から、単にやれない学童クラブもあるから断言できません。)
もちろん怪我をした時に適切に対応してくれないとか、友達との関係を調整してくれないなどは自立との別の話になります。
5.保育園にはない学童クラブのメリット
5-1.学童クラブメリットを、生かしているかは施設次第
学童クラブは保育園とは違うメリットがあります。
放課後に異年齢での関わりや、学校のクラスにいたら出会えないような子と過ごせるということ。
学校内でもそうですし、児童館併設など他の子が多い施設では特にその傾向が強くなります。
また小学生は学校から解放されたらそれまで。
対しての学童クラブに来ている子は、学校だけでは分からないような子どもの状況をキャッチして対応ができるところがメリットです。
学校でのいじめの芽を、学童職員が見つけることも少なくありません。
保育園とは違い相手は小学生なので、体力もあり、細かい作業や考える力など、できることもたくさんあります。
その辺りのいいところをどう引き出して運営してくれるのかは施設次第、働いている支援員次第です。
その反面、強い子が幅を効かせ、同調圧力により本来いい子も大人の言うことを聞かないようなクラブになっているところもあります。
小学生三年生にもなると集団の特性がかなり強く出てきます。
このあたりも指導員の質や力量・職員のチーム力に大きく依存しているところです。
5-2.学童クラブのメリットを生かせたら
学童クラブ出身の子はコミュニケーション能力が高いというデータもあるようです。
日常的に、子どものなかにタイミングよく大人が入って教えたり関われる場所は、学童クラブ以外には少ないと思います。
子どもの頃にコミュニケーションについて教えてくれる人がいるといないとでは大違い。
それがデータに反映されているのだと思います。
この適切な介入ができている施設では、このようないい面が子どもの成長に現れてきます。
6.学童と保育園の違いまとめ
いかがでしょうか。
1 子どもを安全安心な環境で過ごしてもらう
2 そのなかでの成長や人間関係の調整
3 子ども本人のために保護者への関わりや支援
4 子どもと家庭の自立支援
保育園とは似ているところもありますが、学童クラブ特有のものもあります。
まだよくわからないという方は関連記事を読み進めていただければと思います。
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