子どもの意地悪をやめさせたい時、親はスパイト行動を知ってから対応を考えてみよう
「スパイト行動」とは、最近研究が盛んな心理分野から言われている人間の性質。
人を責めても自分の得にはならない、むしろ自分が損するのに意地悪やイジメをしてしまうという行動です。
意地悪してる子どもへ、「そんなことしないのよ」と教えてるはずの大人が
✔私がやりたくもない残業してるんだから、同僚もするべきだ!
✔育児で私ばっか大変、夫が楽してるように見えて、つい嫌味を言ってしまう
👆こんなこと思ってますよね。
いや私もそうです、普通のことなので仕方ない。。
東大出身 理系保育士ジャムです。
意地悪するのは人間の本能的な性質なので、性善説に基づいて「なんでいじめるんだ!」と責めたり叱責したり、
我が子に期待しすぎて「うちの子が、そんなことするはず無いわ!」とかは根本的に間違っているという話。
意地悪って実は人間の性質、しかも日本人はその傾向が強いという研究があります。
親ですら知らない間に陥っているのです。
この記事ではスパイト行動について分かりやすく説明し、人間の性質として「イジメ・意地悪は発生するもの」としてのアプローチをあなたにお話していこうと思います。
1.損しても意地悪するスパイト行動とは
1-1.スパイト行動とは
スパイト行動とは、
自分が損してでも、人を出し抜くために人を陥れるための行動
早い話が意地悪。
スパイト(spite)行動とは「意地悪すること」の専門的な言い回しです。
自分がついでに怒られるのが分かってるのに、敢えて友達のした悪いことを言う。
学童クラブで子どもを叱ると、いつもダメなことをして繰り返し注意される子が
と逆にキレるのがいますが、
「人は関係なくて、今はあなたが怒られてるの!」👈更に叱られ、言われた子も嫌な気分になり、良いことが無いのに言い返してくる。
小学生くらいのになると教えてもないのにスパイト行動が現れてくるので、これは人間の性質と言えます。
1-2.スパイト行動の実験
スパイト行動について心理学者が行った実験を紹介します。
●2人ペア対戦のゲーム
●所持金それぞれ10ドル
●0ドル〜10ドルのうち、それぞれが好きに投資すると、場に出された合計金額の1.5倍をそれぞれ外部から等しくもらえる
(参加する10ドルは自腹)
ex) 自分が6ドル、相手が0ドル出した場合、場には6ドルなので、1.5倍の9ドルが自分と相手に入る。
●また毎回、投資する・しないを表明する
●自分の利益だけ考えたら毎回投資し、10ドル出し続けていればお金は増えていく。
ただし同時に、投資に参加してない相手も利益を得る。
人を出し抜くために少ない投資をする人が必ずいる、結果的に自分が損するのに。。
優位に立つためには多少の損、全体の不利益も仕方ない。👈という思い込みからでてくる行動
これがスパイト行動です。
日本とアメリカで実験をやった場合、ゲーム初期のゲーム性や戦略を分かってない状態の時、10ドル投資しない人が
- 日本人60%
- アメリカ10%
日本人は顕著にスパイト行動が多かったよう。
また日本人が何回もこのゲームをやった場合、
投資せずに利益を得るフリーライダーは初めいるけど、結果的に利益が減ることが分かって同調する傾向になった、という結果が出ています。
- フリーライダーを許さない空気感
- 結果的に出てくる損
両方に敏感に反応するのが日本人の特徴なので、スパイト行動が同調によって抑制されたという話。
全体の利益に繋がるか、疑問のある損する行動にも同調しやすく、非難されることが不利益として、
コロナ禍で「外ではマスク取りましょう」と政府からアナウンスがあるけど、マスクをし続ける日本人。
嫌なら自分も外せばいいのに、
単なる同調によって、足の引っ張り合いみたいなスパイト行動も取りやすい傾向があります。
2.スパイト行動は人間の性質なので、意地悪やイジメ自体を叱っても効果は少ない
別になにか得するわけでもなく、むしろ恨まれたり損があるスパイト行動。
「嫉妬」
「偏った正義感」
「不安」
が原動力になっています。
文化に関係ない人間の性質ですが、日本人は「同調」の形で社会的にスパイト行動をする場合も多いので、
子どもは本能的に感じ取り、日本にそのまま住んで矯正されずにそのまま大人になると、同調が強いスパイト行動につながるんじゃないかな?と思います。
人間がもともと持っている性質が、日本人の同調しやすい傾向に結びつく。
それが意地悪やイジメを二次的に生み出すので、それを単に叱って正そうとするのは効果が薄いのです。
子どもが意地悪をして気晴らし的にいい気分になる。
必ず怒られて損するのが分かっていてもやる。
分かっていてもやる・やってしまう、というところが本質。
私は学童クラブで長年働いていましたが、家庭や学校でストレスがある子は、得てして下の学年の子に意地悪や八つ当たりをする。
家に原因がある場合、親が把握していない場所で子どもはスパイト行動をする。
そしてお決まりパターンとして
👆人間の性質なので、仕方ないのです。
それを叱るだけで正そうとするのは、さながら目が悪い人に向かって
「なんで目が悪いんだ!?」
と怒るようなもの。
子どもにはどうしようもありません。
これに対抗するには親を始めとした大人からの教育と、見本になる行動、不安や嫉妬への正しい対処法を示すことが大切です。
次章からスパイト行動は人間の性質と知ったあなたへ、意地悪やイジメをしない子どもに育てるための具体的な方法をお話していこうと思います。
3.子どもに意地悪やイジメをさせないための大人の対応
子どもの意地悪をやめさせたい時、スパイト行動の視点から親を始めとした大人が取れる対応を、ここでは6つ挙げます。
・まずはしっかり話して叱る
・同調を使う
・親の考えを自覚して改める
・遥かに大きなペナルティ
・承認されたいなど他の欲求を満たす
・習慣化してしまう
3-1.まずは子どもにしっかり話して叱る
一番の基本は、子どもが他の子へ意地悪してるのが分かったら、しっかり叱って理解してもらうこと。
「叱る」ー「叱らない」という狭い視点で、叱らない育児を持ち出す方もいますが、それを言う人は勘違いしてる方が多い印象です。
叱らないで放置が楽だから、単に流されてるだけの人が都合よく解釈してるだけ。
叱らない=必要な注意をしないことではなく、
伝えたい意図を持って教えること。
叱るのは手段の1つなので、伝わるなら叱らなくてもよいけれど、
特に小学生低学年までの男の子なんかは顕著に衝動性が高く、おっとりした口調で諌めても行動に歯止めがかからずエスカレートしがち。
他人に迷惑や危害を加える場面では、世間体もあるのでしっかり教えるのが大切です。
3-2.同調を使い、周りに目を向けさせる
低学年くらいになって周りが見えるようになれば、
やってないでしょ
意地悪行動を諭すのに、人の行動を見て考えてもらうのも有効です。
そんな人をみたらどう思う?
子どもが自分を客観視できるには、少なくとも高学年以上になるのを待つ必要あり。
だけど低学年のうちから積極的に伝えることで、発達や気付きが促進されます。
【子どもの同調圧力と集団心理】みんなでする悪い行動への対応策3つ
3-3.親がスパイト行動に陥らないよう。考えを自覚して改める
この記事の主題、スパイト行動の視点では、
親の考え方や言動を顧みて改める
これが何より大切です。
うまくいってる人を妬ましい、その人が失敗したら「いい気味だ!」
「私も残業してるんだから、新人こそするべきだ!」
「自分が我慢している」 = 「相手も我慢しなければいけない」
こんな考え方をしている人の割合が多い印象、特に余裕のない学童クラブ・保育現場ではそうでした。
自分とは関係ない、それどころかスパイト行動として損も厭わず、相手に得させないようにする人も多く見られます。
意地悪いと思って子どもには教えてるのに、自分が陥っているのに気づいてない大人が、世の中にはびこっている現状。
だからこそ自覚するのが第一歩です。
自分ができてないのを人に教える、ダブルバインドもいいとこですよね。
ダブルバインドとは、二つの矛盾したメッセージを出すことで、相手を混乱させる可能性のあるコミュニケーションのこと。
参照元
👇こんな思考法、客観的に見ると「意地悪い!」と思う人も、似たようなことやってます。
わたし含めてですが・・
私とAさんは、とある店に同じタイミングでアルバイトとして配属された。
私は仕事ののみ込みも早く、怠け癖のあるAさんに比べて多くの作業をこなすことができた。
しかし、どちらも時給は1000円。納得がいかなかったので、店長に「私のほうがよりたくさん働いたのだから、Aさんよりも時給を上げてほしい」と訴えた。
すると店長は「なるほど。でもそんなにたくさん払うことはできない。どうしてもAさんと差をつけて欲しいというなら、あなたは時給900円、Aさんを800円にするのはどうか」と言った。
私は納得し、「それで結構です」と答えた。
ヤフーニュース記事より引用
3-4.スパイト行動への対抗に、遥かに大きなペナルティも使いよう
スパイト行動は、「多少の損」も厭わずに他人を陥れる行為ですが、
多少の損でなく、損が非常に釣り合わなければやらなくなります。
非常に細かいことで叱られ続けられた子どもは、自衛のためにウソをつくようになるけど、
「意地悪い行為は悪いこと」とちゃんと教えた上で、やった場合の重いペナルティを課すのはアリだと思います。
※ちゃんと理解してるかは確認が必要
最近の学校では、子どものイジメ行為に対して多大な罰を与えるケースが増えています。
何人も先生がやってきて聞き取り、何日にも渡って話をして保護者ともやり取り。
その上で「相手の子へ一定期間は近寄らせない」「定期的に話や確認をする」とか。
家庭でやりすぎると逃げ場がなくなるけれど、手段の1つとして使えます。
【計画的無視とは】学童期の困ったちゃん行動への対応テクニック
3-5.承認、感謝されたいなど他の欲求
スパイト行動の意地悪によって満たそうとしている欲求は、他人と比べて相対的な優位さ・・
マズロー欲求段階説から人の欲求を取り出してみると、優位に立ちたいとは「社会的欲求」です。
それは学童クラブなど小学校低学年までの子どもには、まだ出てこないものです。
じゃあなぜ小さい子どもが意地悪をするのか?
もっと根本的な欲求である
✔安全・快適に過ごしたい
✔不安から逃れたい
👆ここが原因になって出てくるのでです。
だから安全で、ストレスなく快適に過ごせれば意味なく「優位に立ちたい」とか思わないので、スパイト行動は出てきません。
子どもの意地悪・イジメは言ってみたら問題のある行動。
問題行動は子どもの満たされていない欲求のサイン+行動の幅が狭いことでやり方が分からないことの現れです。
だから意地悪しなくても安全に過ごせ、認めてもらえれば自然となくなってきます。
3-6.意地悪しない行動や考えを習慣化
スパイト行動は日常過ごしている中で、自然に発生してくる思考パターンなので、
意地悪い考えでなく感謝や謙虚さなどの態度が習慣化できれば、イチイチ考える必要はなくなります。
朝起きて仏壇に手を合わせ、朝を迎えられたことを先祖に感謝するのが昔からの日本式。
意味なく優位に立ちたいとか、そんなレベルの低い考えでなく、思いやりを持った子どもに育てたいですよね。
【思いやりのある子は親の手助けで育つ】学童児でも自立を急がず
4.スパイト行動から意地悪・イジメをしない子どもに育てるまとめ
いかがでしたか?
スパイト行動とは直訳すると意地悪い行動、
嫌がらせをして人を陥れてまで自分が優位に立とうとする心理、普通の人間なら誰でも持っている性質です。
子どもは本能的に行動するので、他の子への意地悪として現れやすいものです。
しかし子どもについてスパイト行動が出てくる原因は、大人のような「人に勝ちたい」という社会的欲求ではなく、ストレス発散の手段が分からなくて八つ当たりをする程度の意味しかありません。
そこで意地悪の行動をしないため、子どもへの対応は
・まずはしっかり話して叱る
・周りの子をみて考えてもらう
・親の考えを自覚して改める
・遥かに大きなペナルティ
・承認、感謝されたいなどを満たす
・習慣化してしまう
人が大変な目に遭っていると気が晴れる
👆みたいに、教えるべき大人が陥っている場合も少なくないので、自身が自覚して言動を改めることが大切です。
日本人はスパイト行動をし易いという実験データもあるため、わたしも含めて気をつけたいところです。
ありがとうございました
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本の紹介👇️
記事執筆時点ではまだ出ていない本ですが、面白そう。
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