1.年齢が上がると非行になる反抗挑戦性障害とは・・
親として心配な子どもの盗み、傷害、交遊関係や生活の乱れ、薬物などに代表される非行。
非行とは思春期以降の呼び方。
小学生や幼児じゃ非行とは言わずに「反抗挑戦性障害」と呼ばれ、年齢によって呼び方が変わります。
幼児期~学童期 | 反抗挑戦性障害 |
思春期くらい | 非行 (行為障害) (素行障害) |
大人~ | 反社会性 パーソナリティー 障害 |
反抗挑戦性障害(ODD)
わざと人をイライラさせる・挑発行為・いじわる・かんしゃくなど、普通の子が通り抜ける"反抗期"にも出てくるから、行動そのものは珍しいことじゃありません。
反抗期には2歳くらいの一次反抗期(イヤイヤ期)と、思春期くらい(自立と依存の葛藤)の二次反抗期が知られており、むしろ出てこない方が問題と言われるくらい成長過程では普通のこと。
だけど日常の様子から、下のような基準を満たすと"反抗挑戦性障害"と診断されます。
反抗挑戦性障害の診断基準:DSM-5
怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも6ヵ月間は持続し、以下のカテゴリーのいずれか少なくとも4症状以上が、同胞以外の少なくとも1人以上の人物とのやりとりにおいて示されている。
・怒りっぽく/易怒的な気分
・しばしばかんしゃくを起こす。
・しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい。
・しばしば怒り、腹を立てる。
・口論好き/挑発的な行動
・しばしば権威ある人物や、または子どもや青年の場合では大人と、口論する。
・しばしば権威ある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する。
・しばしば故意に人をいらだたせる。
・しばしば自分の失敗、また不作法を他人のせいにする。執念深さ
過去6ヵ月間に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある。現在の重症度を特定せよ
ハートクリニックより引用
軽度:症状は1つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)
中等度:いくつかの症状が少なくとも2つの状況で見られる。
重度:いくつかの症状が3つ以上の状況で見られる
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)
"しばしば"が年齢によって週に一度とか、低年齢ならほぼ毎日など変わりますが、内容的には変わりません。
行為障害(非行)
人や物への攻撃性、窃盗や虚言、反社会的行動など、「行為」についての「障害」。
二次反抗期とも被るけど、診断基準についてはこの記事は小学生向けで主題じゃないので省きます。
基本的には反抗挑戦性障害の行動面が、より社会的に困る上位版です。
気になるかたはこちらのサイトで
➔ハートクリニック
反社会性パーソナリティー障害
社会の規範を破り、他人を欺いたり権利を侵害したりすることに罪悪感を持たない障害で、精神疾患の前段階とも言えます。
疾患ではなく、人格に刷り込まれているので「治る・治らない」の単純な話じゃありません。
18才以上になると行為障害がこの呼び名になり、診断基準も少し変わります。
程度により、社会的には犯罪予備軍のような危険な人格障害と言えます。
細かい基準などは同じくハートクリックの記事を参考に。
2.小学生のイライラから思春期の行為障害へ至らせない、基本的な考え方
2-1.親も子どももイライラする悪循環ループ
子どもの攻撃性に対し、大人が威圧的に押さえつける、逆に甘やかして放置するなど対応を間違うと、好転することはない悪循環に陥ります。
①子どもがイライラし、よくない行動をする
②周りの大人が原因や背景を理解できない
③わがまま、厄介な子、問題児みたいなレッテルを張られる
④叱られる、怒られるのが増え、子どもの自己肯定感は下がり、評価も下がるためレッテルが厚くなる
⑤そのマイナスが子どもの怒りとして出てくるか、諦めとして内向きに出てくるか
行動のエスカレートさせて①へ戻る
親もこの渦に巻き込まれているので、親自身のコンディションが悪くなり、家庭内で済まなくなります。
「親も親なら、子も子だよ」
「あの家の子とは遊んじゃダメ」みたいのが親のネットワークで広がったり、
祖父母からは「あんたがダメだから子どもがこうなんだ」みたいな環境だと、親のコンディションも更に下降。
頑張っても悩んでも報われない保護者、そして子どもに当たる。
とてつもないプレッシャーになるにゃ
このループを日々こなしていくことで、子どもは単にイライラしやすい状態から、徐々に怒りっぽい状態になって、ついには反抗挑戦性障害や行為障害方面へ歩み出すことになります。
これを断ち切るために、親ができるポイントがありますが、世間の目にまで対応するには大変です。
できれば子どもの専門家、つまり学童クラブの職員とか、カウンセラーみたいな人に助けを求めるとよいでしょう。
2-2.イライラから非行へ至る悪循環を断つ考え方
さっきの悪循環ループはどこか一ヶ所でも断つことができれば、そこでストップします。
断てるポイントは3つあって、
✔大人が正しい知識を得ること
✔イライラの原因を知ること
✔行動に対応して困った行動を減らす
子ども理解により大人の行動を大きく変えますが、3章でお話していきます。
次に子どものイライラに対応は、大人が考え方を変えたからといっても、怒りっぽさや興奮したときの困った行動の改善には時間と正しいアプローチが必要。
一つめは子どものイライラの原因へのアプローチです。
その原因は取り除けるものなのか?取り除けないなら軽減できる支援を特性に合わせて行うこと。
うるさい環境が本人のイライラを助長する、怒られる回数が多すぎてイライラループなら減らすなど、環境を変えてあげるなどの話しです。
二つ目は行動そのものをなくす行動療法的な手法、原因はあっても暴力とかを許すわけにはいきません。
問題発生場面の興奮しがちな状態で対応するより、何もないうちから予防的に対処するのが基本、4章でお話していきます。
3.反抗挑戦性障害や行為障害は二次障害~発達障害や心理についての知識
3章では、「正しい知識を得る」に関してお話していきます。
幼児~学童くらいの子どもでは、行為障害はもとの原因が他にあって、大人や環境によってさらにそれが引き伸ばされて増幅された結果として起こる二次障害といえます。
行為障害や反抗挑戦性障害それ自体は発達障害じゃありません。
例えばの話・・・
- ・目の前の刺激が多すぎる
- ・音に過敏で落ち着かない
👆みたいなのは自閉症スペクトラム(ASD)によくある特性です。
本人からしたら本当に小さい音まで聞こえてきて落ち着かずイライラ、学童クラブなんかうるさすぎて耐え難い。
それを分からない大人が、些細に見えるきっかけでイライラしてる子どもを見て
「なんでイライラしてるんだ、こっちまでイライラしてくるからやめろ!」みたいに感情をぶつけていつも関わっていれば、
子どももストレスがたまってきて、怒る回数も増え、物を投げたり、「うるせえ、くそばばあ」、暴力的になったり、親には反抗せずとも他の子をいじめたり。
そんな方向に行きそうな気がしませんか?
一方、「イライラしてるのね、こっちの静かなところで好きなことしてな」のように本人の特徴を理解して"叱るでもなく関わる"。
子どもは自分で落ち着いてくると勝手に部屋から出てきて「なんかうるさくてイライラしてたよ」みたいな関わり。
どっちがいいのか。
よくある間違い👇
- しつけが足りてない
- 厳しくすればいずれ身に付く
- 分かっててわざとやってる
- 自制しようと思えばできるだろう
知識がないと、こういった関わりになりがち。
子どものイライラを大人の対応が増幅して、悪循環へ陥ることが多いって話です
思春期の反抗期や、"叱られたくなくて怒って返す"みたいなのは普通の心理で、何らかの発達障害は「普通の心理+特性」が二重なので分かりにくいです。
発達障害から関わりによって反抗挑戦性障害へ繋げないために、大人が理解するべきことは以下の三点
✔脳機能や気質の問題か?
✔本人の理解の度合いはどうか?
✔成長途中での葛藤や防衛機構
3-1.怒りっぽさには子どもの生理的な脳機能や気質の問題も
小さい子ほど衝動も高く、切り替えも苦手です、脳が出来上がってなくて本能的に動くのは子ども全般の特性です。
発達障害があると他の子どもと比べ、年齢が上がっても遅いとか、足りない部分があるように見えます。
それに加えて性格的な部分(気質)も、生まれ持った脳の特性です。
- 脳機能の未熟さ
- 神経伝達物質が少ないとか
- ホルモンバランス
- 気質は性格とも
衝動性などは脳の神経伝達経路の発達によって、本人の自制とは別で仕方ない点。
いつも興奮すると泣き叫ぶみたいのは、脳がそういう作りになっている。
小さい子どもはそもそも癇癪を起こしますね。発達障害があると年齢が上がっても継続する感じです。
脳がそうなってることを知ってば、接する大人がよほど焦ってるとか体調が悪いみたいな場合でもない限り、「しょうがないな」って思えるでしょう。
私は男性なので分かりませんが、生理中の女性がいつもよりイライラしてしまうようなのがホルモンバランスの崩れによるものと言われます。
我が子がちょっとのことでイライラしちゃうのもそれと同じと理解できれば、普段の接し方が変わると思いませんか?
子どもは怒りの出し方もよく分からない、生まれてからたったの10年にも満たない子ども・・怒る気はなくなりそうです。
困った子ではなく、「困っている子」の視点が持てます
何とかしてよ。
3-2.本人の理解の度合いを知る
人の心が年齢不相応に分からない
人との距離感がつかめない
社会や子どものなかでのルールが他の子より分からない
いわゆる空気がまだ読めない
この辺の子どもの理解程度についても知ることでも、対応が自然に変わります。
分からないことを"分かれ!"って本人に叱っても分からなし、「どうしてそうなったのか、自分で考えてごらん」みたいな質問をしたところで分からないから、そんな質問もしなくなる。
本人に無理なことを要求しないために、大人が知っておく項目で、大人の要求が本人の能力を越えていると、ストレスやイライラの原因になります。
大人の方も「なんでこんなに言ってるのに分かってくれないんだ!?」
👆悪循環ですよね。
我が子の理解度がどのくらいか?だいたい把握できると思いますが、コンディションによって変わるので思い込みもNG。
同学年の他の子どもと比べなくてもいいんです。あくまでも「目の前の子が、現在どのくらい理解できているのか」を知ること。
分からないことで叱られるのは理不尽です。
マルトリートメントという虐待に似た対応にもつながり、子どもの脳も変わってくるデータもあります。
3-3.成長途中の心理を知る
- 自立したい
- 何でもできるのに大人に制限されることへの反抗
- 劣等感による投影
- 承認欲求を不適切な表現
小学校高学年くらいから、👆のような心理が出てきます。
人としての普通の心理で、怒られれば嫌だし、次は怒られないようにミスを隠そうとするかもしれない。
自分の嫌いな部分を人に見つけると、嫌悪感をもって攻撃するし、制限されれば自由を求めて反抗もする。
特に一人立ちしたいけど甘えたい、相反するものがあることで安定せず、バランスが保ちにくいのは思春期の特徴です。
自分はなんのために生きているのか?みたいなのに答えも出てないから、毎日無目的に生きているのに気づいて不安になったりする。
こんなのを知らないで一方的に子どもへの関われば、子どもにはストレスが貯まります。
普通の心理的なメカニズムを理解していれば、無意味に制限して反抗されることも減るし、本人ができると思ってるのに「お前はだめだ」みたいな発言をしなくても済む。
人を攻撃するのは「やられる前にやる」みたいに、自分を守るためってのも理解できるでしょう。
構ってほしいのをアピールするように、問題行動が出てくるというのも理解できます。
これらは心理学の知識をひたすらインプットしていかないと難しいので少しずつでOK、勉強すればするほど子どもの行動への理解が進むでしょう。
子どもの施設で働いている人には必須の努力とも言えます。
4.子どもの怒りっぽさやイライラでの行動に具体的な対処
4章では「行動へのアプローチ」をお話していきます。
共通するのは、「問題発生以外の場面で」大人が関わりながら教えること、問題発生時には冷静に対処することです。
問題発生時に冷静になれるかは、3章でお話した子ども理解がベースにある・無しに大きく関わります。
4-1.普段から約束をする
行動に問題があるとき、ダメな行動をやらない約束をあらかじめしておくことです。
「やらない」って約束だけじゃダメで、
- 守れたときのご褒美
- 守れなかったときの取り決め
をしておきましょう。
罰まで到達できないような何重にもセーブポイントを用意。
期間を区切り短期間ごとにクリアすように、守れたご褒美に到達する機会を増やすこと。
物を盗まないなど、達成しても当然でほめることじゃないものは課題にはしないこと
個人的にはポイント制がおすすめで、「怒っても物に当たらないで、この場所で落ち着きましょう」みたいに具体的な課題を示した上で、
「1日なにもなかったら+3、ダメだったら-1、100点到達でご褒美」
物に当たってしまっても、「この程度ならマイナスにしないけど、次はだめだ」みたいに繰り返さない限りマイナスにしないとか。
約束は子どもの自制心を育てるツールとして使います。
4-2.課題の出し方
イライラしても良くない行動は教育が必要で、基本的にはその場ですぐに対処するのが子ども対応します。
そこで「次はしないように」など課題を与えますが、指導のコツは"その課題は人形でもできることか?"
それで出していい課題、適さない課題かをある程度判断できます。
- 我慢しなさい➔動かないだけだから人形でもできる。
- 口で言いなさい➔人形にはできない
- その場から離れなさい➔人形にはできない。
盗まないとか、叩かないとか当然のことは別として教えます。
人形にはできないってのは、ダメな行動に至らないためにどうしたらいいのか、で出す課題です。
4-3.ほめる、すぐにやれることを頼む
イライラしやすい子は怒られることが多くなり自己肯定感も下がりがち。
そこを補填し反抗挑戦性障害に繋げないためには、下がりがちな自己肯定感を上げる「褒めと承認」が必要です。
日常では「問題発生場面」と「問題なし場面」、メインで長い時間は圧倒的に問題なし場面。
トラブルあった時に叱ると抱き合わせで褒めるじゃなく、1日の大半の"問題なし場面"関わって褒め・認める。
すぐできるような簡単な課題「~持ってきて」からの「ありがとう、助かったよ」でもいいんです。
大きな成果をあげた時だけ褒めるのは、スポーツとか目標がちゃんとしていて子ども本人も頑張ってる場合ならよいですが、基本的には小さなことでこまめに褒めます。
"褒めると増長するから"は褒め方が成果に偏ってるからで、「おお頑張ってるじゃん」プロセスを褒めたらそんなに天狗にはなりませんよ。
だけどトラブルがあったときだけ急に出てきて叱ってくるんだよ。
【子どもの褒め方】調子に乗るのは褒める内容が×~素直さを伸ばすコツ
4-4.ソーシャルスキルトレーニング(SST)系の関わり
「ミスをしたら謝る」
「してもらったらお礼を言う」
「不意に目があったら会釈をする」
誰でも知ってる社会スキルをできるように練習するのがSSTです。
本来は社会スキルが低い人のリハビリや社会復帰のために開発された手法で、全員座って場面設定をして、どう答えたらいいか?みたいのを話し合ったりします。
大人に有効なら子どもにも効き、特にイライラしやすい子どもが役立つのは「謝る練習」
突発的に何かやってしまった後、逆ギレして更に怒られる子は悪循環ループに片足突っ込んでます。
チャンスを待っていても教える機会が来ないので、あえてその場面を作り出す。
ちょっとした頼み事を子どもがしてきて、大人が応えてあげたけど無言で立ち去ろうとしたら「ありがと言いますよ」みたいな感じです。
最たる場面はケンカの時、「次はこうしようね」と言って聞かせて、実際に言う練習をさせて、できたら誉めるの繰り返しです。
4-5.駄目はダメと教えてブレない
理由があっても、いけないことはダメと譲らないことが大切です。
悪いと教えてるのに、「ちょっとはしょうがないね」みたいによく分からない指導は下策。
悪いことを教えるにはバシッと"悪いことだ!"というのを薄めないで分かるように伝えます。
・長い説教
・よく分からない例え
・分かってくれて安心したよと肯定
👆こんなのは一切要りません。
伝えきった後でフォローするけど、それとは切り離します。
理由を聞くのも"ダメを教えたあとの"フォローの段階。
「なぜこんなことをしなんだ?」みたいな「なぜ~」系の質問は言い訳させるだけなので、"ダメ"を教えてる段階で質問は不要。
いいか悪いかどっち?のイエスノー系の質問ならOKです。
4-6.子どものやる気を引き出す
子どもは夢中になれるものや興味のあるところから引き出していくのが基本。
嫌なものにたいして「頑張れ」より、自然に誘導する感じがいいでしょう。
好きなことをやってる時間は大切です。
4-1~5まで書いたことを、子どもが好きなことに関連つけてやる気を出してもらう誘導ができたら素敵な指導になりますよ。
5.イライラして怒りっぽい子どもへの対応まとめ
発達や子どもの特性がまずあって、
それに対する大人の対応の不味さ
大人の対応のまずさを解消する方法として、
子どもの心理や特性を理解すること(3章)
叱る場面よりは問題なし状態の日常的な具体的対応を知ること(4章)
について解説しました。
子どものイライラへ不適切な関わりを長期間行っていると、子どもの気質によっては行為障害や引きこもり〜人格障害につながることも少なくありません。
どこかで断ち切って欲しいと思います。
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