1.いじめ原因になり得る集団心理の元、ギャングエイジという年代
1-1.ギャングエイジでは同調により、何も考えずに真似をしやすい
子どもの発達の途中で、心理学的に「自己同一性の獲得」段階があります。
青年期において、自分は誰なのかを知ることを自我同一性を確立すると言う。
心理学辞典(1999)による定義は、 「『自分は何者か』『自分の目指す道は何か』『自分の人生の目的は何か』『自分の存在意義は何か』など、自己を社会のなかに位置づける問いかけに対して、肯定的かつ確信的に回答できること」 である。
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すごく簡単に言うと"自分は自分"というのを、「人はこう思っているけれど自分の考えはこう」
ちゃんと持てるための練習段階で、生い立ちや性格などから自分の考えを確立する時期です。
①生まれてから低学年まで➞お母さんや先生が言ったことは絶対
②高学年〜思春期➞揺れながら自分を確立するギャングエイジ
③思春期を過ぎる➞周りはこう言ってるけど、私はこう思う
自分ができるまでの②途中段階は、いろいろ試している状態です。
人と関わる中で学びますが、主に同じ年代の子と交流しながら学んでいきます。
そこでは「他の人から見た自分は?」(自意識)に興味が移り、人の目を気にするようになります。
自分がなく、人に左右されるためこの時期はとても不安定、仲間とのつながりで同じ行動をする一体感によって安心できます。
その安心を得るために多少のルールは無視されることが同調と呼ばれ、小学校の高学年くらい〜しばらくは年齢が上がるほど同調が強くなります。
中学はMaxで高校生になると少し落ち着いてきます。
さらに年齢が上がって自分が出来上がると、人の行動や意見に左右されない、個人の道徳観に戻ります。
繰り返すけれど、高学年以上はこんな風に不安定な段階です。
同年代の友達も似たようなもの、自分がないから気分で仲良しが変わり、昨日のいじめっ子が今日は被害者。
仲良しが「あの子嫌い」と言ったら、自分もそれに合わせないとダメな気になります。
親などの大人よりも、
仲間が大切になってくる時期ですね。
ギャングエイジ
就学前から小学校低学年までの友人関係は、機会的で継続性がない。たまたま遊び場に居合わせれば友人であり、そこを離れれば友人関係は消滅する。
しかし、小学校中学年になれば、仲間が継続的になり、学級全体で自立や挑戦を始める。保護者との約束よりも仲間との約束を重視するようになる。
限度がわからないため、悪のりや悪ふざけになることがある。
高学年になると趣味の多様化や性別などにより、集団は小さくなる。
また、排他性や教師への反抗も生じる。※高学年は個人差が大きく、幼いグループはギャングエイジが続いている。
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参考
青年期の自己形成における友人関係の意義 - 兵庫教育大学(PDF)
1-2.ギャングエイジでは、仲間から外れられない
集団心理で同調している相手とは一心同体みたいなもので、それに背くのは自分がそこから抜けるため日常が大きく変化します。
また一時的に拠り所が無くなり、さながら地面に立ってる➞空中に漂ってる状態へ。
この変化を自分から取るのは、心理的な抵抗がけっこうありそうですね。
自分がない状態では、ベースになるちゃんとした考えがないから、すぐに人に流されてしまいます。
言うのは自由ですが、この段階の子どもには仲間と一人だけ違う行動をするってのは難しい。
これは分かってあげましょう。
大人でも、用もないのに同じ場所に集まっていきませんか?
自分だって人に流されてるのに、さらに不安定な子どもに求めるのは酷なのです。
また自分がない状態なので、孤立を何よりも恐れます。
そのためいじめられ、集団心理によって仲間内で不利な立場であっても、孤立よりはマシと考える子はとてもたくさんいます。
✔訳もわからず根拠がないのに"寂しい"
✔周りの環境に自分自身が影響され過ぎ。
高学年~高校生辺りまでの子どもの心理状態です。
これへ少しでも対処するには理性を教えていくんですが、後ほどお話していきますね。
2.子どものいじめと集団の質~レヴィン集団心理の実験・集団浅慮の話
2-1.レヴィンの集団心理実験
リーダーが集団の質を決める
高学年以上の子は、低学年までとは質的に違って集団心理が強くなります。
ただ個性が完全に失われるわけじゃありません。
また仲間と言ってもフラットな関係じゃなくて、主張の強い子・負けず嫌いな子・ムードメーカーの子が集団の中心にきます。
このリーダーが集団や仲間グループの質を決めます。
1つ心理学の実験を紹介しておきます。
心理学者レヴィンが20世紀前半に行った「リーダーシップのアイオワ研究」と言われるものです。
詳しく書かれている記事を見つけたのでリンクを張っておきます。
earthship counsultingホームページ
ここでは概要と結論を紹介します。
レヴィンの実験
実験内容
子どもの性格を均等にした三つのグループそれぞれに特定の物を作るという作業課題を与えます。
それぞれのチームのリーダーを
独裁型
場所や作業内容などの的確な指示を与えて全て決める。自分は作業の輪には入らない
民主型
作業前にミーティングをして内容や分担をみんなで決め、リーダーも作業に加わる
放任型
なにもしない、相談されたら答える
独裁型のリーダーの結果
独裁型では、リーダーが強い口調で全て決めてしまうのでメンバーは従いました。
実際に作業の効率はいいけれど、強いリーダーの態度に子どもたちの不満が溜まっていきます。
そしてメンバーも自己中心的になり、互いを批判的に扱うようになってきます。
しかし不満を持っても強いリーダーにはぶつけられないので、はけ口を弱い子に向けていじめが起こったとの結果があります。
この実験により、集団はリーダー的な子の質に左右されるがデータで示されました。
リーダーとまでいかなくても、仲間内のまとめ役・ムードメーカーが中立で民主的ならいじめは起きないことになります。
2-2.群集心理の匿名性や、強さの錯覚などがいじめを生む
要は2-1でお話したように、いじめが起きる・起きないは構成メンバーによるので、
親としては群集心理が悪い方向に出てくる集団からは、子どもの世界を広げて出していく方向で考えたほうが効果的。
その集団が学校のクラスでも同じですよ。
多数派で強くなった錯覚
流されてしまう
罪悪感の弱体化
赤信号、みんなで渡れば怖くない
責任感の希薄化
自分一人だけが責任を負わなくていい
三人寄れば文殊の知恵どころか、集まるとバカになるのは人間の性質(集団浅慮)。
ですが集団のリーダーやメンバーによる雰囲気から決まるので、親としては悪くなった集団を変えるのではなく、出させる方が良いのです。
【個人でなく集団で気をつけるべき心理効果】保育士の心理知識③
3.集団心理により、空気読めない子は仲間から外される
周りの子より明らかに空気が読めない子は、仲間を作る上でとても苦労します。
低学年からの発達障害など課題を抱えている子が成長しただけですが、そんな子の成長はゆっくりなので、周りの子についていけません。
勉強とかの話じゃなく、人付き合いやコミュニケーションの話。
✔相手が怒り出してるのも分からず、いつまでもふざけいる。
✔変なところでこだわって、他の子から煙たがれる。
✔引くところで引けない。
こんな思考・行動パターンの子は次第に敬遠されてきます。
しかも何となくの雰囲気で、敬遠されて外されてきます。
集団心理とは別次元で外される子の特徴だけど、その仲間内でその子への態度が同じになると集団心理も働きます。
空気が読めなくても、"自分がない"のは他の子と同じです。
だけどこの子には仲間が少なく、仲良くしたいと思った子とうまくいきません。
"空気が読めないから外される"、自分の状況がよく分かってない。
ズレてるから注目を集められないけど、それが「無視された」となる。
仲間はずれにされる
・・と被害妄想的になることも。
他の子は何となく合わないから積極的にいじめたりではなく、雰囲気で敬遠してるだけ。
これを大人として"いじめ"と扱うのか?とても難しいですね。
なぜなら反りが合わない子を敬遠するのは、大人でも普通で必要な社会スキル。
うまく仲間ができたとしても、空気が読めない子はいじめられたり、いじられ過ぎ、グループの下層の使いっ走りみたいになります。
それでも、仲良くしてくれる子はゼロじゃないから。その子を拠点にして学んでもらうんですが。
長い目で見た支援的な関わりが必要になってきます。
親だけでは対処不可能なので、学校や学童クラブと協力したり、人間関係の経験を上げる取り組みを増やして時を待つ。
性格も関係するので、期待せず焦らずにやっていきましょう。
関連記事👇️ バカにされる子への支援
4.集団心理を知って子どものいじめへ対応する方法
集団心理と思春期の発達特徴が合わさり、場合によってはいじめになってしまうとお話しました。
原因か分かったところで、対応についてのポイントをまとめます👇️
✔規範意識を教えていく
✔狭い仲間だけではなく、世界は広いことを教える
✔苦痛を感じた時の味方の存在
規範意識を教えていく
「いい、悪い」の判断が仲間に流されてしまうから、グループ内でいじめが発生します。
だから仲間の外から、社会的に正しい価値観を教えていくのが抑止力になるし、
被害者が「今の状況、なにかおかしいぞ」と気づくキッカケになります。
仲間意識は強力で多少のルールは破られちゃうけれど、メンバーの質によって規範意識が高い子が集まれば歯止めが効きます。
狭い仲間だけではないと教える
子どもの世界はとても狭い。
習い事もせず学校にだけ、寝ても覚めても通っているとしたら、本当に狭い人間関係だから、その子にとっては仲間が全て。
多少嫌なことをされても、外されるわけにはいかないんです。
だからこそ、広い世界を教えてあげましょう。
違う場所のアフタースクールに行く、部活じゃない学校外のスポーツクラブに入る、いろんな選択肢があります。
その場その場に違う仲間がいると分かれば、嫌なことをしてくる仲間にこだわる必要もなくなります。
2-2でお話した、集まるほどバカになってる群集心理が働いてるグループからは、親など外部の力で出すか、
所属してても良いけど「その集団が全てじゃない状態」に持っていくのが大切です。
苦痛を感じたら言っていい
いじめ問題に対抗する親の基本的な態度は、「困ったら必ず何とかしてあげる」を常に示すこと。
いじめを隠す心理記事でお話してますが、相談しても「あなたにも原因があるんじゃない?」など言われたら、次は相談しに来ません。
親はあなたの味方、という態度を崩さないことで、苦しくなった時の逃げ場ができます。
逃げ場のある・無しはえらい違い、これは他のいじめの記事でも書いている共通の対応です。
5.集団心理といじめ対応のまとめ
いかがでしょうか?
- 規範意識を教えていく
- 世界は広いことを教える
- 辛いと言ってもらえる日常の関わり
ここまでで集団心理の意味について書いてきました。
また高学年~高校生あたりは、自分を確立するために仲間との付き合いが大切になってきていることも学びました。
また空気の読めない子は苦労することも追加で書きました。
それらを踏まえて、どう対処していくのか?
ぜひ子どもの成長を、見守り、関わっていってください。
ありがとうございました
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