子どもがアレルギー発症した時の対応
以前アレルギー対応の施設としての対応・アレルギーの知識についての記事を書きました。
この記事では具体的に、アレルギー症状を発症した子どもが出た場合、家庭や保育園・学校などの子どもを預かる現場でできる対応について書いていこうと思います。
施設なら普通は全ての職員が外部の研修などで取得しておくべきものですが、そういった機会のない方も多いと思いますので、この記事では私がいくつも研修に出た中や、実際に現場で得た知識を盛り込んでいます。

目次【本記事の内容】
- 1.アレルギー対応準備の前提
- 2.アレルギー症状かどうかの判断
- 2-1.アナフィラキシー
- 2-2.緊急時チェックリスト
- 3.明らかに発症している場合
- 4.薬とエピペン
- 4-1.薬の種類
- 2-2.エピペンの使い方
- 5.マニュアル作成とシミュレーション
- 6.まとめ
1.アレルギー対応準備の前提
アレルギーの発症について、もともと食物や動物などにアレルギーがあると分かっている子については、日頃からマークしているので分かりやすいかと思います。
しかしアレルギー症状て救急搬送されるような人は、それまでアレルギーと診断されておらず、六割が初発(初めて発症して)とのことです。
蜂毒もアレルギーですが、刺されてアナフィラキシーショックとなり搬送されるような場合もあります。

このため、アレルギーの子がいないとされている施設でも一定の知識やマニュアルの整備、シミュレーションなどの備えが必要になります。
また元々アレルギー持ちの子でも、発症の仕方はその日の体調や状態により大きく異なります。
アレルギーが初めて確認されるのは1~2歳が7割とのデータがありますが、小学生になってから初めて症状が出て、「はじめは原因が分からなかったけれど調べたらアレルギーだった」という子も何人か見てきました。
いつもボツボツが出てから全身に広がる、咳がまず出るなどの発症の傾向は有るかもしれませんが、次は分からないということです。
いつもは緩やかに症状が進み、内服薬で落ち着くといっても、次に発症した時は急に進行するかもしれないし、内服薬では治らないかもしれないということです。
施設では保護者から、「この子のアレルギー反応は、まず咳が出ます」などの情報が来ますが、それに囚われてはいけないということです。
ではどうしたらいいかと言えば、次の2節で示すチェックリストを活用する事になります。
厚生労働省のアレルギー対応ガイドラインがいいのですが、文字ベースで分かりにくい面もあるため、「知識」の面ではこのような本も参考になるかと思います↓
2.アレルギー症状かどうかの判断
2-1.アナフィラキシーとアナフィラキシーショック
よく聞く言葉ですが、定義について書いていきます。
アナフィラキシー
アレルギーにより多臓器に症状が出ている状態
アナフィラキシーショック
血圧が急に下がることで意識レベルの低下やショック状態(脳や臓器に血液が行かない)になっている。命に関わる危険な状態。

2-2.緊急時チェックリスト
子どもはそもそも体調が急に変わりやすいため、出た症状がアレルギー反応によるものか、単に体調が悪いのか素人ては判断できないことが多いです。
その際に活用できるのが下のようなチェックリストです。これは東京都が出しているもので、定期的に改訂されているものです。

リンクはこちら 東京都保健福祉局 東京都アレルギー情報ナビ
右の青は様子を見る段階で、最初の一時間は五分ごとに様子を見ておく状態です。
ずっと軽い咳しか出ないとなれば風邪かな、などと区切りをつけてしまうのも判断となります。
黄色はより悪い状態にならないか注意深く備える段階で、様子を見て記録し、医療機関を受診します。
赤は緊急の段階で、救急搬送やエピペンを打つ、場合によってはAEDを使うような状態です。
基本的には赤の項目のどれかに当てはまるかから順に青の項目の方向へチェックしていくのがよいです。しかし怪しいなと思う程度なら青の項目からでもよいでしょう。
これらの症状をいちいち覚えておくのは不可能なので、施設職員なら紙にコピーして携帯しておくとよいでしょう。
3.明らかにアレルギー発症している場合
青のアレルギー症状を疑っている状態なら、本人に動けるか確認して別室に動くなどの対応も取れます。
しかし明らかにつらそう、チェックリストで黄色に該当する場合はその場での対応となります
特に施設では自然と周りにいる他の子の方を動かしていきます。
野次馬は対応の邪魔ですし、子どもには他の子が苦しんでいる姿、場合によってはそのあと亡くなったなどとなると相当のショックを残し、管理責任も別件で問われることになります。
本人の姿勢ですが、呼吸が苦しければ座っていてもいいですが、基本的には横にするのがよいです。
アナフィラキシーショックの場合は血圧が下がり、頭や末梢まで血が巡っていない状態になります。血は重力に従って淀むことになるため、足を上げて頭を下にする姿勢がショック体位です。

吐き気がある時は、ショック体位を取らせるとともに顔を横にします。

一度決めたら体位を変えないようにしましょう。
ショック状態にあるときに体位を変えることで、急に体内の状態が変わり、数分などの短時間で亡くなる場合も事例としてあります。
赤の項目に、「ぐったりしている」があります。
初めからそういう状態にいることは稀で、怪しいなと思い黄色から観察し、内服薬を飲ませていると「ぐったりしている」状態になります。
しかし、薬を飲んで落ち着いたと同時に寝てしまうのと区別がつかないため、呼び掛けを続けることで判断すること、赤を疑ったら五分以内にエピペンを打つことが必要になります。
エピペンは主成分がアドレナリンで、もともと体内にある物質なので、間違って打ったとしても特に子どもには副作用はほとんどありません。(高血圧の高齢者などは別です)
判断をあやまり、正常化バイアスが働き、打つべき時に打てなかったとなる方が危ないです。

4.薬やエピペン

4-1.薬の種類
アレルギーに処方されものはいくつかあります。
塗り薬、貼り薬 | 持続性長時間、速効性なし |
内服薬 | 30分後~ 持続性数時間 |
エピペン | 即時効果 持続性20分 |
塗り薬、内服薬については、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンを抑える薬、ステロイド系の時間をかけて出てくる症状を抑える薬が出ます。
貼り薬は皮膚からゆっくり浸透していくもので、緩やかな効果があります。
内服薬は飲めば効くのですが、ヒスタミン系は30分程度は効果がでるまでかかるため、即時性のアレルギー症状の場合はそれよりも早く進行する事もあります。
また効果は数時間しかもたないため、やはり受診が必要です。
エピペンは体内にあるアドレナリンで、日常的にも血圧の上昇に作用しているものです。
これを注射で取り込むことでアナフィラキシーショックで下がりきってしまった血圧を急に上げる作用があります。
効果は急ですが、短時間しか持たないので、救急車がくるまでの繋ぎにしなりません。
アナフィラキシーショックが進み心肺停止状態になってしまったらもはやエピペンは効きませんので、AEDを使い蘇生法を行うしかありません。
4-2.エピペンの使い方

エピペンを処方されるとトレーナーもついてきます。
説明書きもあるため、それに沿ってやれば問題ないのですが、緊急時にその説明書が手元にないと慌てますね。
そうならないために、後でも書きますが必要なものをすぐ取り出せるようにまとめておくのが大切です。
これには載っていないけれど、研修などで話がよくある事について書いていきます。

医療行為かどうか
エピペンは医療行為かと言う心配はしなくていいとのことです。医療行為と認定されるには「反復する意図がある」ことがありますが、それには当たりません。
それよりも緊急時における救命活動は医療行為にはあたりません。
持つ方向
持つ方向は気を付けないと、打つ人の自分の方に針が出てきます。安全装置はある程度固いのですが、慌てている時ほど落ち着きましょう。
打つときは相手を固定
針で指すときには相手は暴れます。針が通常の注射より太いのであまり折れないようですが、それでも皮膚を横滑りに裂いてしまうことはあり、研修では縫う怪我をさせて薬も打てずにダメにしたという写真も見せてもらったことがあります。
説明書にあるように、膝と足の付け根の二関節固定、上から腕をまっすぐ伸ばして体重をかけて固定することが大切です。
記録は行う
短時間しか効かないため、救急車が来たら◯◯時◯◯分に打ったと正確に伝える必要があります。
二本目
普通はすぐに効果がでて20分は持続するはずですが、効果が出ないような場合。二本目がある場合は打っても大丈夫とのことです。

5.マニュアル作成とシミュレーション
子ども施設での話ですが、厚生労働省からアレルギー対応のガイドラインが出ていますが、それにしたがって活用している施設は75%とのことです。
実際に現場でうまく対応できなかったケースの原因として、
- マニュアルがなかった
- マニュアルがあったが訓練をしていなかった
が上位に来ます。
特に保育園では搬送された子どものうち、家ではなく保育園て初めて発症したのが6割、3割は誤食によるもの。
初発が6割りもいるので、アレルギーと聞いていない子もいつなるか分かりませんね。マニュアルすらないのは危険きわまりないことです。
またマニュアルがあってもシミュレーションをしていないと分からないことがたくさんあります。
シミュレーションを行ってみて代表的な反省点↓
- チェックリストを携帯しておけば良かった
- エピペンの打ち方や体温計・時計など必要物まとめておけばよかった
- 人の動きが分からなかった
施設職員なら名札はつけていると思いますので、名札ケースと一緒にコピーしたチェックリストを携帯しておくのがよいかもしれませんね。
人の動きとしては、役割を振る役目の人(発見者)がふっていきますが、施設責任者が到着した時点で指示は責任者が出すようにシフトするのがスムーズです。
家などで1人で打つ場合は、記録や経過観察~救急要請・エピペンを打つまで全部やらないと行けません。抜けがないように見やすい所に掲示しておくのがよいかと思います。

6.アナフィラキシー対応~エピペンの使い方まとめ
いかがでしょうか。
大切なのは知識・準備・シミュレーションの三点です。
知識は言うまでもなく、準備は物の準備やマニュアルの整備まで、シミュレーションはそれをもとに実際に動いてみてマニュアルの見直しを行っていく作業となります。
大切な子どもの命を守ってください。
厚生労働省のアレルギー対応ガイドラインがいいのですが、文字ベースで分かりにくい面もあるため、「知識」の面ではこのような本も参考になるかと思います↓

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