きょうだい児との関わり
きょうだい児、聞いたことありますか?
きょうだい児とは本人は普通だけど、介護が必要なくらい重めな障害を抱えている兄弟姉妹がいる人のこと。
子どもの頃は親に甘えたいけれど、親は大変な障害児の兄弟姉妹に手を取られるので、自分は満たされない。
構ってほしくても親は大変そう、家の手伝いをやれば喜ばれるけど、むしろやって当然のようになって褒められもしない。
障害児がいることでの明らかに他の家より制約が多く、違うことに気づいてくる。
構って欲しいウップンを晴らそうとしても、親は困った顔をするか怒られるだけ。
👆こんな毎日繰り返していると、アダルトチルドレンみたいな感じになりやすく、成長しても悩みが尽きないのがきょうだい児です。
家事や介護に関してはヤングケアラー的な負担を強いられる場合もあります。
東大出身 理系保育士ジャムです。
こんな境遇のきょうだい児ですが、言葉すら知らない人が大半です。
私が長く勤めていた学童クラブ業界、毎日子どもと接している人ですら、知ってるのは数%程度でした。
当然、何が問題でどうしたら良いか?なんて知りません。
だからこの記事を書くことにしました。
ここを見つけたあなたは、どんな形でそんな子ども達に関わっているか分かりませんが、
簡単に解説したあと、親を含めて特に小学生くらいの子どものきょうだい児に関わる大人として、どう接すればいいかお話していこうと思います。
1.きょうだい児とは?
きょうだい児とは、障害をもつ兄弟姉妹がいる健常児という意味。
「児」と書くと子どものように聞こえますが、他に言葉が無いので、大人になっても端的に置かれている境遇を示します。
兄弟姉妹が障害を持つと言っても、小学校の普通学級にいける程度のADHDやASDなど、グレーゾーンに分類される発達障害ではなく、
特別支援学校や支援学級に行ってる/行ってたとか、福祉手帳を持っている、介護が必要など、分かりやすい「障害」を指すことが多いです。
障害を抱えた兄弟姉妹へのケアや負担は、保護者のみでなく「きょうだい児」にも掛かってきます。
✅家族をケアする役割を期待され、実際に担う「ヤングケアラー」的な負担
✅他の家の兄弟との違いに気づいての、心理的な動き
✅親が障害を抱えた兄弟ばかりに手を取られて、自分はネグレクト気味
👆こんな問題をはらんだ負担を、きょうだい児が負っているのも少なくありません。
小学生くらいだと自分も定まらず甘えたいけど、親が大変なのが分かって甘えられない。
だけど構って欲しい。
こんな葛藤を抱えて生きていると
・必要以上にいい子になる
・勉強を頑張ってトップレベルになる
・逆に反抗的になる
・おちゃらけてピエロになる
いろんなタイプに分かれてきます。
私の出会ってきた「きょうだい児」、小学生のうちは反抗的な子は少なくて"いい子"ばかりでしたが、
見た目以上に抱えているものがあり、将来的にどうなるか危うい。
まあ下の子が健常児の場合、普通に末っ子体質だったりもあるけど、
それでも他と比べると不自然に大人びているなど、日常関わっていると感じるものがありました。
日本に「きょうだい児」が何人いそうか、推定している記事を見つけました。
「令和4年版 障害者白書」によると、日本には約965万人の障がい者がいると報告されています。
また、「2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)」では、児童のいる世帯の平均児童数は1.69人と統計が出ています。
このことから、日本のきょうだい児はおよそ666万人前後と推測されます。
引用元
100人規模の学童クラブで働いていると、だいたい2〜3家庭は家族に障害児がいたので、決して少なくありません。
その反面「きょうだい児」という言葉や、必要なケアについては知られてない現状。
40人くらい集まってた学童クラブ職員に、知ってて当然のように講義してたら、みんなポカンとしてる。
よくよく聞いてみたら、誰も「きょうだい児」という言葉を知らず・・・ということがありました。
何人もいた集まりでも、
こんな程度でした。
2.ヤングケアラー的な負担は、次第に感じなくなる
ヤングケアラーとは、
「大人がやるべき家事や家族の世話を、日常的に行っている18歳未満の子ども」
子どもに不相応な負担がかかっているけど、本人は気づかずに歪みが出てくる境遇の子どもです。
児童館で働いていた頃、小学3年生の子が2歳くらいの子を遊ばせるため、疲れ切って来館した事がありました。
話を聞くと親は出かけて、いつも世話をしてるのは自分と・・即日子育て支援センターに通告案件でしたね。
こんなのは氷山の一角、最近クローズアップされてきましたが、
きょうだい児は似たような、年齢不相応な負担を強いられがちです。
家庭内の仕事は親が頼む場合もあるし、子どもが言われなくても率先してやる場合もあります。
率先してやっているように見えて「自分を見てほしくていい子」になるためにやってるケース、
毎日やってるので麻痺してるけど、普通この年齢の子はやらない仕事を担ってるとか、良くあります。
私の親世代が子どもの頃、昭和前半くらいは家事をやらないと学校行かせてもらえなかったとか話に聞いてましたが、時代が違う。
色んなことが分かってなかった時代の話なので、「昔の子はやってた」という論理は通りませんよね。
低学年のうちから
- 下の子の世話
- 高齢者の介助
- 家の手伝い
- 皿洗い
- 買い物
などを仕事として、明らかに他の家より大きな負担を強いられてる子は多くの場合、外で不満を爆発させてました。
学童クラブだと下の子を良いように使ったり、指導員へ無意味に反抗して思い通りにならないと乱暴になったり。。
それでもきょうだい児には、いい子が多かったのが度し難い。。
自分で納得して抑え込み、色んなことを我慢して生きてきたけど、
何かトラブルきっかけで話を聞くと、雪崩のように溜め込んでいた思いを吐き出すとか、たまにありました。
健全な姿じゃ
無いと思います。
いい子に見えても溜めている・・けれど、いい子なので親含めた周りの人もSOSに気づけない
というのがきょうだい児の陥りやすい状態です。
全てのきょうだい児がこうではありませんが、他の家庭よりこうなる可能性は高いという話です。
3.他の家と違うと気づく学童期の心理的な動き
低学年までは障害を持っている本人とも、普通の家で幼児の弟妹と対等に喧嘩するように、違いはよく分かっていません。
それでも小学校や学童クラブなど、色んな友だちと関わるようになれば、何か他とは違う違和感を感じ始めます。
何か変だよね
何気ない一言から疑問を持ったり、他の家の兄弟がいわゆる普通に生活してるのを見て、「うちは他と違う」と次第に確信していきます。
家ごとに
・お小遣いをもらってる/もらってない
・自転車に乗って良い/自転車すらない
・外食頻繁/外食なんてしたこと無い
色んな違いはありますが、兄弟姉妹に障害児がいることでの違い、他の家にない制限などネガティブな面を知っていく。
そこで親が説明をミスると、疑問がいつしか不満に変わります。
でも不満を抱えつつもそれを表に出すと、お母さんは悲しい顔をする。
自分も甘えたいけど、お父さんお母さんは大変そう。
片付けを頑張ったり手伝わないと、すぐイライラしちゃう。
障害の兄弟へ意地悪しようものなら、とても怒られる。
・・怒られないように、親がニコニコしてくれるにはどう振る舞えばいいのか?
こんなことを無意識にでも考えながら毎日過ごしてると、アダルトチルドレン(次章)っぽい感じになりそうですね。
もっと成長して中高生〜大学生くらいになって、自分自身に向き合えるまで、何で自分がこんな振る舞いをしてるか?なんて気づかないでしょう。
ウェブ上でかなり有名なヒトデさんが書いた、きょうだい児としてのブログに、
子どもの頃に同じ当事者の本を読んだら、綺麗事しか書いてなくてガッカリしたという一節。
見た目で分からなくても、抱えているものが確実にあるのです。
4.きょうだい児のなりやすいアダルトチルドレン状態
きょうだい児はアダルトチルドレンと似たような感じになりやすいです。
アダルト・チルドレンとは元々アルコール依存症の親が情緒不安定で、親の顔色を見ていい子にしてないとヤバい
・・という子が身につける、年齢不相応に人への気遣いや、自分を抑えて空気を読もうとする振る舞いを端的に表した言葉で、大きく分け5つのタイプに分かれます。
- 優等生タイプ
- 問題児タイプ
- 空気タイプ
- ピエロタイプ
- おせっかいタイプ
優等生タイプ
・良い成績になるよう頑張る
・「しっかりした子」とみられる
・自分を責めやすい
・目に見える評価で自分を保つ
問題児タイプ
・ルールを無視した行動で目立つ
・衝動的で乱暴な言動や態度
・自分を分かってくれる人はいない
空気タイプ
・なるべく目立たないよう振る舞う
・おとなしくて面倒をかけない
・自分の価値を感じられない
ピエロタイプ
・周囲を笑わせようとする
・落ち着きがないように見える
・悩んでいてもニコニコしたり
おせっかいタイプ
・優しくて思いやりのあるように見える子
・周囲の役に立つよう頑張る
・自分より他人を優先させる
誰しも持ってる要素なので、どれかに当てはまるからアダルトチルドレンとは言えませんが、
家庭環境などと併せて「自分を抑え込みながら」こんな状態になってる場合は、"問題あり"と考えられます。
きょうだい児は私の経験上、優等生タイプやおせっかいタイプが多い気がしますね。
まあ人間誰しも、何らかのストレスやコンプレックスを抱えているもの。
問題がありながらもその子なりに小さい頃から過ごしてれば、それが人格となる。
自分自身で納得した生き方になることも多いので、結局は程度の問題です。
人への世話を焼くのが好きで、障害を持った兄弟きっかけで福祉に興味を持ち、その道に進んだ知り合いが何人かいます。
自分に向き合って納得した上でその道を歩み、生き生きと働けるなら幸せな人生です。
まあアダルトチルドレン要素はあるので、どう転ぶかは分かりません。
心の闇が根深くて、人のために働いているつもりが自分の欲求を満たすためだった👈これに気づき、大人になって悩む人もいるでしょう。
何言ってるか分からないかもしれませんが、
例えば保育士でも子どものために働いてるつもりで、満たされない自分の思いのはけ口に子どもを利用してる人がたまに混ざってます。
5.きょうだい児へ大人として配慮したい点
アダルトチルドレンは程度の問題とお話しましたが、子どもが自分でコントロールできないストレス状態になりやすいのがきょうだい児です。
しかも学童くらいまでの小学生だと、置かれた環境で生きていく以外の選択肢はなく、モヤモヤ/イライラの原因が何かすら分からない。
そんな子に対して親や学校の先生、学童クラブ職員など関わる大人として配慮したい点がいくつかあります。
●しっかりを期待して求めすぎない
●話を聞いて認めてあげる
●マンツーマンの時間を大切に
●手に負えないなら話題にしない
しっかりを期待して求めすぎない
無意識に家の手伝いを率先してやったり、外でも友だちのトラブルへ首を突っ込んで解決しようとするなど、しっかりしている子の場合。
その子の性格だと思って頼めばやってくれ、頼りになるので色々期待しちゃいますよね。
学校でどうしょうもない子に、しっかり目の子をお世話係につけてしまうケースもあります。
でも学童クラブくらいまでの小学生、本来は自分のことで精一杯。
怒られながら学んでいくのか普通なのに、人の世話とか、本人が自分からやるならまだしも、大人がそれに甘えて更に何かを頼むのは避けたほうが良いです。
自分らしく伸び伸びと生きていくのに、年齢が低いうちは世話を焼くべき他人は邪魔、制限になるからです。
きょうだい児は特に制限が多めになるので、さらに頼み事をするのはヤングケアラーに片足を突っ込ませる行為と思い控えましょう。
話を聞いて認めてあげる
思春期までのきょうだい児は、親への甘えが足りてない場合が多いです。
親が障害を抱えた兄弟に手をかけざるを得ないからで、更にしっかりしてるタイプなら、なおさら放置されがち。
甘えを満たすにはスキンシップも有効ですが、年齢が上がるほど話を聞くことの重要性が高くなります。
また言葉で分かるように「頑張ってるね」「助かってるよ」みたいな感謝の言葉でも救われます。
まあそれで奮起して頑張りすぎる子には「そんなにやらなくても良いよ」みたいに、逃げ道を作ってあげるのも必要ですが。。
基本的に思いを聞くのは大切で、じっくり話さなくても日常的な些細な会話や、反応が薄くても声掛け続けるなど、関わる姿勢が大切です。
1人や特定の人といる時間を大切にしてあげる
きょうだい児は大人が障害児にかかりきりなので、親を独占する時間がありません。
家でその時間を敢えて作らないと、一生来ない勢い。
まあ家で・・という状況は親も自分の時間が欲しいから毎日とか難しい。
学校の先生に話したい子は山ほどいるけど、先生は忙し過ぎて願いは叶わない。
そこで学童クラブみたいな、外部の大人がいれば救いになります。
遊びに行けば話を聞いてくれる大人がいる児童館とか、近所にあれば居場所になります。
やはり親がたまにでも
敢えて作るしか無さそうです。
手に負えないなら話題にしない
きょうだい児は色々抱えているので、外にいて手に負えないなら話題にしないで普通に接するのも手です。
大部分の人と同じになりますが、知っていて不用意に話題に出さないよう、気をつけるだけでも違うと思いますね。
相手が成人に近くなるほど、経済的な心配や介護の問題などの悩みや不安が明確になってきます。
ガッツリ関わるつもりがないなら、話題にしないで地雷を踏まないよう気をつけて、普通に接するだけでも救いになると私は考えます。
6.まとめ
いかがでしたか?
制約が多くて、自分を押し込める機会が小さい頃から積み重なり、その結果アダルトチルドレンみたいな感じになりやすいのがきょうだい児。
いい子は多いけど、見た目以上の負担や色んな思いを抱えています。
親がしたほうが良いことは沢山あるけど難しいので、関わる大人として機会があれば
- しっかりを期待して求めすぎない
- 話を聞いて認めてあげる
- マンツーマンの時間を大切にしてあげる
- 手に負えないなら話題にしない
こんなことに気をつけると、特に小学生など低年齢の子の救いになると思います。
きょうだい児 ヒトデさん
「きょうだい児が結婚した話」
ありがとうございました
よければコメントいただけると
嬉しいです👇️
本の紹介👇️
学童クラブ支援員や保育士など、保育者の方向けプレゼント配布中↓
このサイトでは子育て情報や子ども心理などのほか、学童クラブ~保育園や小学校の子ども向けのおすすめの遊び/オススメ本をそれぞれ100以上紹介しています
見やすい記事一覧です
👉️地域・自治体別の学童クラブなど👈️
学童クラブに関するよくある疑問はこちら👇👇👇